JAMES GANDOLFINI

September 20, 2021

JAMES GANDOLFINI

ジェイムス　ガンドルフィーニはなんと言っも「ソプラノ」THE SOPRANOS （９９−０７）です。あのニューヨークの隣のダサいと言われるニュー　ジャージーに住むマフィアの親分、トニー　ソプラノ TONY SOPRANO は永遠にハリウッドの歴史に残るキャラクターでしょう。

そして、あまりにも突然に、たった５１歳の若さでイタリーでの休暇の最中に亡くなってしまいました。もっとも、４０代から５０歳以上に見えたジェイムスですから、多くの人が、え、たった５１歳だったの！とショックを受けたのも事実です。

１９６１年９月１８日　ニュージャージー州のウエストウッドWESTWOOD に両親共にイタリー人の家庭に生まれています。父親はレンガ職人で第２次大戦の功績でパープルハートの勲章を授かったそう、母親は学校給食の賄いをして、徹底的なカトリック信者の両親で、家ではほとんどイタリー語で話していたという、典型的な移民の家庭でした。

スポーツ少年だったジェイムスは名門ラトガーズ RUTGERS 大を８３年に卒業、大学時代から近くのクラブなどの用心棒をして生活費の足しにし、しっかりと演技力を付けるためにマイスナー　テクニック MEISNER TECNIQUE を学びます。

ブロードウェイの舞台では「欲望という名の電車」A STREET CAR NAMED DESIRE のステーヴ　ハベル STEVE HUBBELLの役を得たり、古典劇に出ては演技力を磨き、「トルーロマンス」TRUE ROMANCE （９３）でかなり台詞のある役を演じ、「クリムソン　タイド」CRIMSON TIDE （９５）では、かなり重要な役を受けて、海軍士官ジーン　ハックマン GENE HACKMAN の部下を演じてました。

同年の「ゲット　ショーテイー」GET SHORTYでも良い味を出しています。

「ソプラノ」の役を得たのは「トルー　ロマンス」を見たプロデユーサーの推薦だったとか。家族を愛する生活の裏で、平然と敵のマフィアを殺すトニー　ソプラノの役は賛否両論で、「アンチヒーロー」ANTIHERO のレッテルを貼られました。

トニーをリアルに演じるために、抑えられない怒りを表す時は、自分を殴ったり、重量感を出すために靴に石を入れたりと色々なテクニックを試したようです。

この役で、エミー賞３個、ゴールデングローブ賞も受賞しました。

「ザ　メキシカン」THE MEXICAN（０１）は、制作・主演のブラッド　ピット BRAD PITT がジェイムスを起用、ゲイの殺し屋を演じさせてオドロキの効果を出したのです。再びブロードウェイに戻って「ゴッド　オブ　カーネージ」GOD OF CARNAGE （０９）に、ジェフ　ダニエルズ JEFF DANIELS と共演、「ソプラノ」を終えてからは制作にも手を伸ばして、米国兵の戦争のトラウマなどのドキュメンタリーを続けて制作しています。

ニコール　キッドマン NICOLE KIDMAN 主演のテレビドラマ「ヘミングウェイ　アンド　ゲルホーン」 HEMINGWAY & GELHORN （１２）も制作を手掛けて注目されました。

「ソプラノ」放映中に何度かインタヴューしたのですがツーショットが見つからず、１枚見つかったのは「イナフ　セッド」ENOUGH SAID （１３）というジュリア　ルイス　ドライファス JULIA LOUIS DREYFESS と共演した、夫婦危機ドラマで、この後すぐに亡くなってしまったのです。

トム　ハーデイー TOM HARDY と共演した「ザ　ドロップ」THE DROP（１４）はジェイムスが亡くなった後に公開されましたが独特の雰囲気が漂う秀作でした。

１９９９年にマーシー　ウダスキー MARCY WUDARSKI と結婚、マイケル MICHAEL という息子が９９年に生まれ、０２年に離婚、２００６年から交際していたデボラ　リン DEBORAH LIN と０８年にデボラの故郷のホノルルで結婚、２０１２年にリリアナ LILIANA という女の子が生まれています。

２０１３年６月１９日、イタリーのシシリー島にあるタオルミーナ TAORMINA 映画祭に出席するためにローマに滞在中、ホテルの浴室で倒れているのを息子が発見、すぐに病院に運ばれましたがそのまま息を引き取りました。心臓発作だったそうです。

泊まっていたのはボスコロ　エクセドラ　ホテル BOSCOLO EXEDRA HOTEL という高級ホテルで、今は　パラゾ　ナイアビ　ホテル PALAZZO NAIADI HOTEL と名前を変えていますが写真を見ると威圧感を与える豪華な建物、イタリー移民の両親のもとに生まれ、イタリー系をずっと演じてきたジェイムスにふさわしい場所と言えるかも。もちろんあまりにも早すぎる別れではありましたが。

「ニュージャージー生まれゆえの多少の劣等感を持つ、小太りの半分生意気で、半分脳細胞がなまっている、という典型的なマフィアのルックスを生かして似たような役を演じていたものの、本物のジェイムスはシャープな頭脳の持ち主で、人々の不幸や不運に敏感な本物の博愛主義者、戦後のトラウマに苦しむ若い帰還兵のために、ドキュメンタリーを制作したり、サポートに走ったり、他人のために尽くす努力を惜しまなかった大いなる愛情の持ち主」

と書かれているように、誠に惜しい人を亡くしてしまいました。

ニュージャージーっ子で、洒落た住所の邸宅などに引っ越したりせず、ずっと地元に住んでいたジェイムスにニュージャージー州知事は彼が亡くなった時には全州の官舎に半旗を掲げるように命令し、後に記念碑を建てて、ニュージャージーの誇り高き息子を偲んだとあります。