TONY LEUNG

TONY   LEUNG


いつもエレガントで,品があるトニー レオンは、ハリウッドでは,ジャッキー チェン,ジェット リー,チョー ユウンファに続く中国系人気俳優です。どうしてもセリフが重要でないアクシヨン スターの方に人気と知名度に分があります。

新作「グランド マスターズ」(13)のカンフーのマスターの役の為に,既に48歳と言う年で2年間も体作りと訓練をしたと言うハードワークがトニーの気骨ある人となりを感じさせます。この程度のスターになったら,実際の技を見せるシーンなどをスタントマンに代わってもらったり,コンピューターでごまかしたりすぐのが常識の今,信念を持ってやり遂げるのが彼の俳優としての格調を見せていると言えましょう。

1962年6月27日 香港に生まれ,7歳の時から芸人を目指したと言う生まれつきの演劇人。
アジアのクラーク ゲーブルと呼ばれるように,他のアクシヨンスターには無いセクシーでプレイボーイの雰囲気が,ノーブルなルックを引き立て,ロマンテイック ドラマの主人公がお似合いです。
マギー チャンも同じように美しくて,シックで,ふたりのコンビは香港のハンフリー ボガードとローレン バコールにもなぞらえたとか。往年のスターに喩えられるところが,ふたりのクラシックな物腰を表しています。

わたくしが初めて,トニーの良さを痛感したのは「ブエノス アイレス」(97)でレスリー チャンとゲイの恋人同士を演じたとき。ブエノスアイレスの南の先端,ケープ ホーンまで旅をして,何とか幸せになろうとする若いふたりの感情と生活苦がにじみ出る佳作です。英語のタイトルは「ハッピー トギャザー」と言うトニーのマスターとも言えるウオン ガーワイ監督の作品。

「ウオンは殆ど台本無しで映画をスタートする。電話をもらい,大体の話をすると僕は直感的にそのシーンの色とか動き、静けさなどが頭に浮かぶ。現場では非常に要求がましく,僕らの力をもっともっと出しなさいと押しして来る。厳しくて難しいが、やりがいがあって、それで今まで彼とのコンビを組んで来た。こう言う監督と俳優のコミュニケーシヨンは珍しいだろうが,不思議な事に僕の場合は上手くいく」

ふたりは「欲望の翼」(90)で初めてコラボレーシヨンをし,「花様年華」(イン ザ ムード フォア ラヴ)(00),「2046」(04)などなど、美しく,妖しく,エロテイックな雰囲気の映画を創り上げています。

トニーがハリウッドで注目されたのは「インファナル アフェア」(02)。刑事とやくざがそれぞれ囮になって,お互いの秘密を探ると言うスリリングな刑事ドラマでした。後にマーテイン スコセッシ監督がアメリカ版のリメーク「デパーテッド」(06)を作ってアカデミー監督賞を受賞しています。

トニーは香港のスターなので,「ヒーロー HERO」(02)の時に始めて中国に渡って撮影に参加したそう。何となくこちら(特にアメリカ)にいると、香港も中国も同じだと思ってしまいますが,今だに文化や政治が異なっているそう。
その「グランド マスター」ですが、監督はアン リーでトニーとは「ラスト コーシヨン」(07)で一緒に仕事をしていますが、彼の監督ぶりは,ウオンと正反対で
「アンは何でも細かく説明し,リハーサルも凄く長くて,撮影に入る前に全ての準備が整っている状態を好む。こう言う監督も又やりやすくて,僕は歓迎する」
「ラスト」のLUST は最後ではなく,欲望と言う意味で,トニーは第2次大戦中のスパイが徘徊する上海で若い女性に遭遇し,長い,ほんもののように自然でエロテイックなセックス シーンを演じてます。

もの静かに話し,既にスターの位置を成し遂げているせいでしょう,売り込もうなどと全く欲張らずに,淡々と役作りを話し、監督や共演者を褒め,自己を前面に出さない、実にソフトなタッチの知性に溢れたの美男子です。


2007「ラスト コーシヨン」

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