ISABELLE HUPPERT

ISABELLE   HUPPERT

今朝(12月12日)のゴールデン グローブ賞候補者の発表で晴れて、ハリウッドのスターと並んで、主演女優賞にノミネートされたイザベル ユペールは、私の大大好きなフランスの女優です。
候補になったのは、「エル」(16)というフランス映画で、監督はオランダ人のポール ヴァホーベン、あの「氷の微笑」(92)などを手がけた、常にリミットに挑戦するエネルギッシュな監督ですから、まあその内容のすごいこと!

「ピアノ レッスン」(01)で性的満足を得るために自分の性器を切り刻んだり、他人の性交などを 覗き見て興奮し、精液のついたちり紙を拾って、その匂いを嗅ぎながら、映画館の片隅でオナニーをするピアノ教師を演じたイザベルに仰天し、以後、彼女の映画を特別に見るようになったのです。その前は、可憐で、ひ弱なイメージの知性的な女優だと思っていたのですが、実は、強靭な芯を持つ逞しい演技派だと分かってきました。


今回の「エル」も広いお屋敷に1匹の猫と住むヴィデオ会社の女社長という設定で、ある日、家に戻ると強盗が隠れていて、彼に凶暴に突き飛ばされて、レイプされてしまうのですが、警察にも届けず、後で、鍵を変えたぐらいで、シャワーを浴び、夕食を友人と食べて、ワインを飲みながら、今日レイプされたの、などと平然として言うのです。
そしてそこからの行動の猟奇的というのでしょうか、マゾヒステイック とも違う、何とも異常な行動が、観客をギャフンと言わせてしまうのでした。

こういう異常性にあふれた女性を演じて、撮影が終わった時はどうやって、元の自分に戻るのですかと質問すると
「別に何もしなくても、すぐ自分に戻れますし、それほど気張って演じているわけでもないのですよ。自分とかけ離れた役を演じるのが楽しくてたまりません。誰もが持っている秘密の欲望とかを、正面に出して演じることが出来るなんて、すごく愉快な仕事だと思っています」
と、ノンシャランとしているところがまた、何とも言えなく魅力的なのです。
例えばカトリーヌ ドヌーヴなどですと、ばっちりメイクアップをして、美しくも、異常な女性をドラマテイックに演じるでしょうが、イザベルは、日常生活の1部のように、淡々とさり気なく演じて、それがまた、非日常を浮き出してしまうという効果をあげてます。
イザベルの静謐な美しさ、深い知性が、まさかこの女性が!と言うショッキングな反応もおきるでしょう。

1953年3月16日 フランスのパリ生まれ、裕福な商人の家に育ったことも、彼女の不思議な素っ気なさにつながるのかもしれません。

キネマ旬報11月下旬号(11月5日発売)に私が書いたイザベルのインタヴュー記事が載っていますので、もっとお知りになりたい方はバックナンバーをお探し下さい。
いつか時間が出来たら、そして、その気になったら、自分で書いた原稿が載った雑誌のページをスキャンして、アップしようと思っているのですが、こういう仕事って、アシスタントとか居ると良いのですがねー。
猫が何でも見ているのです。イザベル自身も猫を飼っているとか。



2016「エル」で、平然と赤ぶどう酒を飲む女主人公。

2016  ELLE


2016  ELLE 上とちょっと違う表情なのです。

2016  ELLE

2016「エル」レイプシーンを演出するヴァホーベン監督とイザベル

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