R.I.P. JOHN LE CARRE

December 14, 2020

R.I.P. JOHN LE CARRE

昨日、１２月１３日の日曜日、英国の作家、ジョン　ル・カレが８９歳で亡くなりました。

コロナではなく肺炎だそうで、長い患いでなく入院してすぐに亡くなったとのこと。

最も好きな作家の一人、ナンバーワンだと言っても良いでしょう。自身もスパイだっただけにフィクションの世界にリアリテイーがたぎっていました。

おそらく彼の創作したスパイの一人、最も有名なジョージ　スマイリー GEORGE SMILEY はジョンの分身だったと思います。

２５冊　出版したとありますが未出版の原稿などが見つかって欲しいなあ、と願うばかり。そのうち８冊にスマイリーが登場します。

先日ショーン　コネリー SEAN CONNERY が亡くなって伝統的な英国スパイのアイコンが消滅した気分。

００７を書いたイアン　フレミング IAN FLEMMING（０８−６４）より、ル・カレの内容はより複雑で、よりインテリジェンスがあって、何より、その書き方が、上流社会の人々を観察する時のシニカルな見地、自らもイートン校 ETON で教えていただけに英国エリート　クラスの描写が細かくて、冴えた描写に、どこか遠いところから眺めているスタンスが伺え、それが特徴だったと思います。ウイットとスマートな会話、教養のある人々の様子からロンドンの場末の人々の生活まで、何もかもが真に迫ってくる迫力がありました。

英語が母国語でないワタクシはル・カレのセンテンスを毎度２回は繰り返し読まないと意味が分からないことが多く、難解ではないものの、普段使わないヴォキャブラリーが散りばめてあります。その文体にリズムとサスペンスが溢れて、それがスパイ小説のトップと言われる所以でしょう。

スマイリーの役はなんと言ってもアレック　ギネスALEC GUINESS につきます。

彼の「テインカー　テイラー　ソルジャー　スパイ」

TINKER TAYLOR SOLDIER SPY（７９）はTVシリーズで７回のエピソードにスマイリーとして登場。

ゲイリー　オールドマン　GARY OLDMAN が「裏切りのサーカス」（１１）で熱演していますが、ル・カレ自身が

「暗い裏通りでギネスに出会って、道を訪ねたら優しく教えてくれるだろうがオールドマンだと殺されそうな気がする」、と諸手でギネスを支持していました。ワタクシも同感。

１９６５年の「寒い国から帰ってきたスパイ」では、　　　　ルパート　デイヴィース RUPERT DAVIES がスマイリーを演じてますし、

「ザ　デッドリー　アフェアーズ」（６７）

THE DEADLY AFFAIRS （原作の題名は「コール　フォア　ザ　デッド」CALL FOR THE DEAD ）ではスマイリーという名前がパラマウント　スタジオの所有になっていたため、チャーリー　ドッブス CHARLIE DOBBS と言う名前に変えて、名優ジェイムス　メイスン JAMES MASON が演じていますし、

「ア　マーダー　オブ　クオーリテイー」A MURDER OF QUALITY （９１)ではいつも剽軽なデンホルム　エリオット　DENHOLM ELLIOTT が軽い味のスマイリーを演じて、ル・カレは彼が一番、自分が描いたスマイリーのイメージに近いと言っていたそうな。

ル・カレの本名はデヴィッド　ムーア　コーンウェル、 DAVID MOORE CORNWELL スパイの仕事をしながら本を書こうとした時、ボスにペンネームを使いなさいと言われて、フランス風にして、ル　カレは、そのあたり、又はお硬い性格というスクエア、といった意味もあるものの、大した考えもなく決めたとのこと。今も名前の由来を質問されると「よく覚えてない」「あまり意味なく付けてしまった」などと、ノンシャランに答えています。

スパイ、探偵小説は何と言っても英国のライターのエレガントな表現が最高、P D ジェイムス P.D.JAMES 、グラハム　グリーン GRAHAM GREENE 、ドロシー　セイヤーズ DOROTHY SAYERS　などなど多少ジャンルは違っても、ウイットに溢れたスタイルがページから感じられて少し昔のロンドンの街角にさまよい込んだ気分になります。

ニュースを聞いてからとりあえず　急いで書き上げましたからあまり内容がありませんが、大好きな人の死を書き留めるという作業で少しばかり、ピリオド　が打てるような気がします。

ページの上で、映画の中でル・カレ、もスマイリーも永遠に活躍しているのがせめてもの慰めです。

ご冥福を心よりお祈りいたします。