JUDI   DENCH

私めが最も好きな そして尊敬しているジュデイ デンチの最新作 「ザ ベスト エキゾテイック マリゴールド ホテル」(12)は久しぶりに彼女の 普通の優しい女性の
知性と感性とたっぷり見せてくれます。

夫を失い それまで仕事をした事の無い主婦だった彼女がインドの老人ホテルで豪華な余生を と言う広告を見て一大決心をしてなけなしのお金を集めて参加。ビル ナイ、マギー
スミス、トム ウィルキンソンと言った英国のシニア スターもそれぞれの問題を抱えて
この激色彩、激騒音、激交通がどよめくインドにたどり着き もちろん ホテルは
古ぼけた ぼろいビルで ここでいかに環境に順応していくか と言うドラマです。

「007」でのボンドのボス役、「恋に落ちたシェイクスピア」(98)「アイリス」(01)「あるスキャンダルの覚え書き」(06)「ナイン」(09)
などなどデイム ジュデイの役は 王侯貴族、知識人、エキセントリックにしてチャーミングな芸術家と言ったものが多いのに 今回は 何の才能も無いと思っている未亡人が
世界でも有名なインドの電話交換手(日本の事はよく知りませんが アメリカで技術の質問を受ける料金相手払いの電話はほとんどインドの国で答えているのです。ですから妙な
アクセントで 不必要にていねいで 要領を得ない 事で疎まれています)
の会社で電話マナーを教えると言う格好の職を得るのです。

あのシエイクスピア女優にしてアカデミー賞受賞者 そしてエリザベス女王から “サー” 騎士の勲章(女性の場合はデイムですが)を受けたデイム ジュデイがインドのマス
コミュニケーシヨン システムの発音や話方を整えると言う設定が何とも愉快。

もちろん映画の彼女は単にお行儀の良い ロウアー ミドルクラスのおばさんですが。

始めてお目もじしたのは 「ヴィクトリア女王の至上の愛」(97)と言う女王と馬番
の愛を描いた作品。
最愛の夫  アルバート公を失った女王は公の御贔屓のハイランド ホースマン、ジョン ブラウンに会い 彼からいつまでもめそめそするなと励まされているうちに 愛が芽生える
と言う身分を超えたロマンスで 女王は自分の事を “ ミセス ブラウン”と呼んだそう。
原題は それゆえ 「ミセス ブラウン  」なのです。ビル コナリーが馬番で 二人の
掛け合いは それはそれは 心にしみる 愛情が溢れたものでした。

ジュデイはいつも柔らかそうなウールのショールなどをスタイリツシュに肩に掛け
1997 「ミセス ブラウン」
その堂々とした姿勢は 小柄なのに 威厳があって 同時に 慎ましさ と 分をわきまえた知性が立ちこめて 若い人たちの面倒見も良いと聞く優しいヴェテランでした。

低い声なのに 舞台で鍛えてますから しっかりと通って 嗄れ声の笑いは伝染力があり
自己軽視のウィットは英国の遺産ですし。

最愛の夫を亡くした直後に会ったときも よよと泣き崩れたりせず 自己抑制の極地
を見せてました。
ヴァネッサ レッドグレーヴやアイリーン アトキンズのような長身 痩せ形 貴族的風貌
を持ち合わせてないジュデイですが 内面の崇高さがにじみ出て こちらがひれ伏したくなるようなノブレス オブリージ (高い身分の人の義務)を放つのです。

今年の12月に78歳になりますが 情熱を持って 舞台に映画にテレビに活躍している姿は シニアの極上のお手本でもあります。

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