COOPER HOFFMAN

July 11, 2022

COOPER HOFFMAN

大好きだったフィリップ　シーモア　ホフマン PHILIP SEYMOUR HOFFMAN の長男、クーパー　ホフマンが「リコリス　ピザ」LICORICE PIZZA （２１）という映画でデビューして主演をキメてます。ブロンドの髪に、ぽちゃぽちゃした赤ちゃんぽい顔、健康そうで、屈託のない笑い顔、優しそうで健気な表情、全てが父親そっくりで見ていて、涙が出て来てしまいました。特に最初の頃の、まだハリウッドの澱が付いていないフィリップのうぶくて、人懐っこい顔とおんなじで、遺伝とはこういう奇跡を生むのだと感動、感心しています。

フィリップはご存知のように、天才的アーテイストの暗黒の境地に滑り込んだのでしょう、２００２年２月１４日たった４６歳でドラッグ　オーバードース（過剰致死）で亡くなりました。３人もの小さな子供を遺して。クーパーは当時たった１０歳、父親の遺体を載せた車を見送る時の写真がありますが、寒い２月のニューヨークでコート無しの白いシャツ姿で本能的にか、両手を合わせていて、何度見ても涙が湧いてきます。父親の映画にちょい役で数回登場したそうですが本格的に演技してセリフを言う役は今回が初めて。

「絶対に俳優にはなりたくなかった。父親があれほど上手だったアレーナ ARENA （勝負の場所）に入ることが怖かったから。小さい頃から馴染んでいた監督のポール　トーマス　アンダーソン PAUL THOMAS ANDERSON が送ってきてくれた脚本を読んで、同時の彼の強い支持もあって、この役なら僕でも出来そうだ、うん、やってみたい！」って勇気が出てきて「リコリス。。」に出演する決意が出来たのだよ」

と父親のフィリップが雲の上で苦笑しているに違いないようなコメントを出していました。

撮影に入ったのは２０２０年のコロナ危機の真っ最中、クーパーは１７歳、相手役の人気歌手グループの一人、アラナ　ハイム ALANA HAIM は１９９１年　１２月１５日生まれの３０歳、彼女も映画初出演というアンダーソン監督らしい勇気満々の配役でした。

ちなみにリコリスはお菓子の一種でこれを好きな日本人は珍しいと思うほど変な味で、黒い色のはまさにビニールそのもの、これにピザをかけて、昔のビニールのレコードを意味します。

物語は１９７０年代初期のロスアンジェルスの北にある広大な住宅地、サン　フェルナンド　バレー SAN FERNANDO VALLEY に住む若者たちの生態、クーパーは少年俳優の役で、大人たちの前では妙に自信たっぷり、しかし女性に対しては全く未熟で、その落差がおかしいのです。彼のあこがれの対象の女性になるのがアラナで、大してキュートでも美しくもないのですが独特の魅力があって、彼女が自分から進んで選挙事務所で働いたりする自立心が爽快です。年下の少年からの思慕も晴れやかに、手際よく扱って、彼の心を破ったりせず、観客は安心し、突然ショーン　ペン SEAN PENN 扮するウイリアム　ホールデン WILLIAM HOLDEN とか、ブラッドレー　クーパー BRADLEY COOPER 扮するジョン　ピータース JON PETERS （元ヘヤースタイリスト、後にプロデユーサー）などが登場して、画面を騒がせるのも愉快でした。

クーパーは２００３年３月２０日、フィリップと衣装デザイナーのミミ　オドネル MIMI O'DONNELL との間に、クーパー　アレキサンダー　ホフマン COOPER ALEXANDER HOFFMAN としてニューヨークに生まれています。父親は子供たちへの遺書として、

「必ず大都市、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコに住むこと、なぜなら文化がすぐ近くにあるから」と頼んでいたそうで、彼らしい想いと願いが感じられます。オハイオ州やら、アラバマ州などで暮らすと本当に文化の果ての巨大なアメリカですから。

「リコリス　ピザ」は何と、ベスト映画、監督、脚本とオスカー賞３部門で候補になりました。

さて、クーパーは今の所、次のステップに関しては沈黙を保っています。父親から学んだに違いないその注意深さも素晴らしいとワタクシはますます感心するばかり。

何はともあれ、あっという間にに過ぎてしまう若い日々をおおいにエンジョイして欲しいものです。