PETER USTINOV

April 20, 2022

PETER USTINOV

古い映画ファンでしたら、ピーター　ユステイノフ　という名前をご存知でしょう。才能余って変人、奇人の域に入ってしまったみたいな俳優にして、監督、作家、オペラの監督、画家、何よりも「ラコンター」RACONTEUR と呼ばれるその話術が世界レベルで名高いアーティストと言いましょうか。

「スパルタカス」SPARTACUS （６０）でを怪演してオスカー受賞、「トプカピ」TOPKAPI （６４）というトルコの博物館にある宝石強盗の映画では人情味あふれる愉快なガイドを演じて、ここでもオスカー助演賞受賞、最近？では　昔の「ナイル殺人事件」DEATH ON THE NILE （７８）でエルキュール　ポワロ HERCULE POIROT を演じて彼ならではの洒脱で、ユーモラスで頭脳明晰なベルギーの灰色の細胞の持ち主を演じてました。

映画を見るたびにから妙に気になる存在で、ワタクシが少女の頃から大ファンとして、彼の動向を追っては、美男子のスターと同じぐらいに、スクリーン上で異常に目を引く「優越感とひねた味」の性格俳優の才能を賛美していたのです。

１９２１年４月１６日　英国はロンドン生まれ、２００４年３月２８日にスイスのジェノリエ GENOLIER で８２才の生涯を閉じました。

普通の人の１０倍ぐらいのアドベンチャーを詰め込んだ、それこそ数奇な一生だったに違いありません。

ピーター　アレキサンダー　フライハー　フォン　ユステイノフ　PETER ALEXANDER FREIHERR VON USTINOV としてロシアとドイツ系の父親、祖父はロシアの男爵、母親は画家にしてバレーのデザイナー、エチオピアの血も混じっているというヨーロッパの貴族と文化人の家系に生まれ、そのおかげでしょう、英語、ロシア語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ドイツ語はペラペラ、ギリシャ語、トルコ語も話すと言う言語の天才でもあります。

車のコレクターとしても有名で膨大な数の車を所有していたそう。

結婚は３回、イゾルデ　デンハムOSOLDE DENHAM （１９２０−１９８７）と１９４０年から５０年まで、スザンヌ　クロウテイア SUZANNE CLOUTIER とは１９５４年から７１年まで、最後はヘレナ HELENA と１９７２年から彼が亡くなった０４年まで。

１９６０年から英国の税金を逃れるためにスイスに居住、息子の一人はイゴー IGOR と言って、１９５６年生まれ、作曲家、アーテイストで、写真を見ると父親そっくり。

さて、ワタクシの母はしょっちゅう洋画に連れて行ってくれましたが、小さい時観た聖書のドラマが強く印象に残っていて「クオヴァデイス」QUO VADIS （５１）は中でも大好きな映画でした。ロバート　テイラー ROBERT TAYLOR とデボラ　カー DEBORAH KERR と言う正統派の美男美女が主演、ピーターは悪名高い皇帝ネロを怪演、ちなみにこの題名はラテン語で「どこに行くのか」という言葉だそう。禁止されたキリスト教の信者が黙って砂の上に魚の絵を書いて自分は信者であると無言で伝えた場面を妙に鮮やかに覚えています。聖ペテロが漁師だったための信者のシンボルだったのです。

巨体と威厳のある風貌のせいでしょう、ローマ皇帝のような役が続きます。有名な「スパルタカス」（６０）では主演のカーク　ダグラス扮する奴隷、スパルタカスを雇うグラデイエイター調教所のオーナーの役、これでオスカー賞受賞、次は「トプカピ」（６４）のどこか詐欺師っぽいガイドの役でオスカー賞受賞、この原作を読んだのですが、「トプカピ」宮殿の名前は全く出てこず、ほとんどのページは宝石泥棒よりもピーターが演じるガイドの冒険ドラマに終始しています。

ピーターが演じた役の中でも人気が高いのがエルキュール　ポワロ探偵で、どこか人を食ったフランス語訛りのキャラクターはほとんどピーター自身の延長でした。当時７１歳でしたが、エネルギッシュで人生を謳歌している「喜び」が伝わってきました。

その憧れのピーターに会えたのは「ロレンツオのオイル」LORENZO'S OIL （９２）と言うニック　ノルテ　NICK NOLTE とスーザン　サランドン　SUSAN SARANDON が主演ジョージ　ミラー　GEORGE MILLER 監督の映画で、彼とのインタヴューはノンストップのおかしなエピソードから、ロシアの話、ロンドンやエリザベス女王に騎士の位を授かった時の印象、等などスムースに、ウイッテイーにおしゃべりをしてくれたのです。ハリウッドの物書きとして最も幸運で、貴重な時間でした。

いつか、取材ノートを引っ張り出して、彼のインタヴューをちゃんと記事にまとめたいと思っております。