THOMAS KRETSCHMANN

THOMAS    KRETSCHMANN


トーマス クレッチマンはいったい何回ナチ将校の役をしたのでしょうか? クルト ユルゲンス(Curd  Jurgens   1915-1982 )も何度か演じてますが、最近のドイツの俳優はナチ軍人の役を拒むとも聞いています。英国人俳優が好んで演じているのは,敵国の究極の悪漢に挑戦を覚えるのでしょう。リチャード3世の様に、権力と忍び寄る不気味さがよろしいのでしょうね。

「戦場のピアニスト」(02)で主人公のユダヤ人につかの間の憩いの場を与える教養あるナチ将校を好演したトーマス クレッチマンが一世一代の豪演技を見せる「アイヒマン」(07)をつい最近DVDで見ました。
「ファイナル ソルーション」(最終解決策)と呼ばれるユダヤ人大量虐殺の最高責任者として,アルゼンチンで逮捕され、イスラエルに連れて行かれ、ここの独房で、当時世界中が息を吞んで注目していた、アイヒマンの取り調べでの受け答えを描いた佳作です。
鋭い感覚、深い知識、慇懃にして傲慢な態度、揺るがぬ優越感をたっぷり見せてのアイヒマンの最後の日々は、見るものの心を乱す、恐ろしい迫力を持ってました。
英国(ドイツ資本も入っているかも)映画のせいか、ユダヤ人の関係者がじつに不思議な配役で、取り調べに当たる警察のベテランをトロイ ギャリテイー(ジェーン フォンダの息子)、その妻はドイツ人女優のフランカ ポテンテ、政府の高官を英国俳優のステイーヴン フライ(英国の叡智と言われるウイッテイーな俳優で、調べてみましたら母方の祖先がハンガリーのユダヤ人でした)などなど。

独房で平然と煙草や赤葡萄酒を要求したり,敏感な嗅覚で,外側で誰かが聞き耳をたたているのを察知したり、尋問の相手を自由に操ったりするナチの高官の姿を見ていて,アンソニー ホプキンズがオスカー賞を受賞した,名物モンスター役、「羊たちの沈黙」(81)での「ハンニバル」を思い出しました。博士の博識を行使して,人間の邪悪さをとことんまで味わって,タブーの領域を楽しむ怪人達です。

トーマスは1962年8月8日,旧東ドイツのデッサウに生まれ,水泳選手としてモスクワ五輪に出た事もあるそうです。東ドイツのスーパーアスレート訓練を受けたからには,大層強靭な体と精神の持ち主でしょう。
19歳の時に西ドイツに亡命,その時,凍り付いた海だか湖を泳いで,足の指を凍傷で失くしたと言う凄いエピソードの持ち主です。
演劇学校に入り,映画「スターリングラード」(93)で注目されました。同じ題名で,内容がずっと劣る「スターリングラード」(13)にも出演しています。
日本の赤穂浪士とか、関ヶ原と言った歴史劇を何度も映画化するのと同じで,ドイツ人にとっては,多くの戦士が命を落としたスターリングラードが第2次大戦敗戦の引き金になっただけに,想いが募るのでしょう。

トーマスが妙なセンチメンタリズムに捕われずに,ナチの軍人を毅然と演じている俳優意識に拍手を送りたいと思います。
2007「アイヒマン」でのトーマス クレッチマン(左)



2004「ヒットラー最後の12日間」ブルーノ ガンツ


07「アイヒマン」のクレッチマン

2002「戦場のピアニスト」


2008「ワルキューレ」

2007「アイヒマン」のステイーヴン フライ(左)とトロイ ギャリテイー

2011年のテレビ映画。1942年英国船を救ったドイツのUボート船長役
2008「ワルキューレ」

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