BRUCE DERN
BRUCE DERN
新作「ネブラスカ」(13)は「サイドウェイ」(04)や「ファミリー トリー」(11)「アバウト シュミッド」(02)などの普通の人間の普通の生活を叙情詩の様に描く監督,アレキサンダー ペインの作品。
今回は頑固老人が販売促進の100万ドルの賞金が当たったと信じて,本社のあるネブラスカまで,別にする事が無いから連れて行ってあげると言う次男と旅をし,その途中で故郷に寄り,ここで,彼が本当に金持ちになると勘違いする親戚や友人の現金な姿を見せ、さらに自分が育った屋敷を見に行って,ここで死んだ弟の事を思い出して,ほろりとし,さて賞金の本社に行くとその手のあさはかな人々に慣れた受付が,細かい事項を読めば,賞金は無いと分かる筈,でもはるばるいらしてくれたので,これをどーぞ、と,ウイナー(勝利者)と書いた安物のメッシュの野球帽を手渡し,父子は妙に満足して帰路につくと言うあらすじ。
この老人の役をブルース ダーンは約10年前に知り,絶対に手がけたいと監督に頼んだものの内容が地味なため,全く資金が集まらず,その間にペイン監督は「サイドウエイ」や「ファミリー トリー」を作って,ハリウッドの人気監督となり,やっと映画化にこぎ着けたものの,この役の第一候補は「シュミッド」の主役をしたジャック ニコルソンと言われ,しかしニコルソンは脚本のセリフが覚えられないと断り,やれやれと思った矢先に,ジーン ハックマンに頼むと再びがっくりしていたところ,ジーンはもう隠退の身で,仕事はしないと断り,やっとの事でブルースの番が来たのですと。
ハリウッドはベテランの俳優たちにとっても地獄のように厳しい状況なのです。
そして今,ブルースの飄々とした演技がもろもろの賞の候補に挙がっています。
さて彼は,74年の「華麗なるギャツビー」でロバート レッドフォードの恋敵,トム ブキャナン役を自然な金持ち息子の動作と表情で演じてますが。それもその筈,祖父はユタ州知事から,フランクリン デラノ ルーズベルト大統領かの軍事大臣になった政治家,伯父はピュリツアー賞に輝いた詩人にして,米国国立図書館長を努めたアーチボルト マクレイシュ,名付け親が52年と56年に大統領候補になったアルダイ ステイーヴンソン,両親はシカゴの大デパートのオーナーにして,社交界のメンバーと言うエリートにして富豪の家に育ったのです。
1936年6月4日イリノイ州のウイネテイカに生まれたブルースは両親の期待に反して,法律を学んで弁護士,ゆくゆくは政治家になる道を拒み、ペンシルバニア大を2年で中退,その上オリンピックで800メートルレースのチームに入ろうと努力したものの選考に洩れ、こう言う家柄のどら息子さながら舞台を選びます。
59年の舞台でイリア カザンが目をつけ,彼の招きでニヨークのアクターズ スタジオへ参加。ここで女優のダイアン ラッドと知り合い60年に結婚。どん底の貧乏生活を味わうのですがこの時母親に400ドルを貸して欲しいと頼んで,断られたそう。「あなたが法律を学ぶなら全部払いますが」と。メロドラマのようです。このふたりの間に67年に生まれたのが、ローラ ダーン,その前の新婚の60年に長女が生まれたのですが,生後18ヶ月の時にテイーンエイジャーのベビーシッターに任せていたら,自宅のポールに落ちて溺死と言う悲劇に見舞われています。
ブルースは長身に,長い手足と言う体つきを買われて,映画に出るようになり、悪人やドラッグ中毒者,と言った役を手がけ、もろもろの西部劇の映画にも顔を出してます。
「当時のスターたちは,まさにビッガー ザン ライフのスターだった。ジョン ウエインは,常に不安な状況に身を置かないと上手くならないぞと僕を人の前でけなしたり,突き放したりしては,あとで可愛がってくれた。ベテイ デイビスは週末になると自宅を開放して出演者はもちろん,クルー全員を招いて,盛大な食事や娯楽の出し物まで提供してくれて,まさに女王の存在だった。みんな普通の人間には無い巨大なスター性をもっていて,近づき難いオーラを放っていたね」
とブルースは懐かしんでいましたが,実は彼は大変なおしゃべりで一旦話し始めると止まらなくなり,インタヴユーでも延々と,50年前の事でも名前も場所もはっきりと覚えていて,それは楽しそうで内容も最高に面白のです。
先日はニユーヨークのパーテイーに顔を出し,ここでレオナルド デイカプリオにばったり合って,実はレオはすぐにどこかに行かなければならないのに,大先輩のブルースの長い会話をずーっと1時間近く聞いていました。レオのマナーはさすがに良かったとは言え、こう言うスーパースターを捕まえて独り占めにしてしまうブルースの無頼漢風行動はやはり怖いものなしの生まれと育ちから来たのでしょうか。
「ブラック サンデイー」(77)や「カミング ホーム」(78)ではパワフルな演技力を見せ,ハリウッドの演技派として評価されるように。特に不誠実な妻のジェーン フォンダの夫にして、ベトナム帰還兵の後遺症に悩む役を演じた「カミング。。」ではアカデミー賞助演賞の候補になってます。
「ザット チャンピオンシップ シーゾン」(82)ではロバート ミッチャムらのベテランと共演,次の選挙で再選を狙う市長の役を熱演。その後は,スタジオを手こずらせたりして、あまりぱっとせず,映画の脇役,テレビのゲスト役などを手がけていただけに,「ネブラスカ」への執着が理解出来ます。
今だに雨が降っても,風が吹いてもランニングは欠かさないヒョロヒョロの体に、ほわほわの白髪の永遠のランナーですから,どこかに老長距離ランナーの風化され,枯れた雰囲気があって,それが又不思議なエレガンスを漂わせています。
もっと詳しくブルースの事をキネマ旬報1月上旬号(12月20日発売)に書きました。ご覧頂けたら嬉しいです。
新作「ネブラスカ」(13)は「サイドウェイ」(04)や「ファミリー トリー」(11)「アバウト シュミッド」(02)などの普通の人間の普通の生活を叙情詩の様に描く監督,アレキサンダー ペインの作品。
今回は頑固老人が販売促進の100万ドルの賞金が当たったと信じて,本社のあるネブラスカまで,別にする事が無いから連れて行ってあげると言う次男と旅をし,その途中で故郷に寄り,ここで,彼が本当に金持ちになると勘違いする親戚や友人の現金な姿を見せ、さらに自分が育った屋敷を見に行って,ここで死んだ弟の事を思い出して,ほろりとし,さて賞金の本社に行くとその手のあさはかな人々に慣れた受付が,細かい事項を読めば,賞金は無いと分かる筈,でもはるばるいらしてくれたので,これをどーぞ、と,ウイナー(勝利者)と書いた安物のメッシュの野球帽を手渡し,父子は妙に満足して帰路につくと言うあらすじ。
この老人の役をブルース ダーンは約10年前に知り,絶対に手がけたいと監督に頼んだものの内容が地味なため,全く資金が集まらず,その間にペイン監督は「サイドウエイ」や「ファミリー トリー」を作って,ハリウッドの人気監督となり,やっと映画化にこぎ着けたものの,この役の第一候補は「シュミッド」の主役をしたジャック ニコルソンと言われ,しかしニコルソンは脚本のセリフが覚えられないと断り,やれやれと思った矢先に,ジーン ハックマンに頼むと再びがっくりしていたところ,ジーンはもう隠退の身で,仕事はしないと断り,やっとの事でブルースの番が来たのですと。
ハリウッドはベテランの俳優たちにとっても地獄のように厳しい状況なのです。
そして今,ブルースの飄々とした演技がもろもろの賞の候補に挙がっています。
2013年12月 ニユーヨークで。レオとのおしゃべりの前。 |
1936年6月4日イリノイ州のウイネテイカに生まれたブルースは両親の期待に反して,法律を学んで弁護士,ゆくゆくは政治家になる道を拒み、ペンシルバニア大を2年で中退,その上オリンピックで800メートルレースのチームに入ろうと努力したものの選考に洩れ、こう言う家柄のどら息子さながら舞台を選びます。
59年の舞台でイリア カザンが目をつけ,彼の招きでニヨークのアクターズ スタジオへ参加。ここで女優のダイアン ラッドと知り合い60年に結婚。どん底の貧乏生活を味わうのですがこの時母親に400ドルを貸して欲しいと頼んで,断られたそう。「あなたが法律を学ぶなら全部払いますが」と。メロドラマのようです。このふたりの間に67年に生まれたのが、ローラ ダーン,その前の新婚の60年に長女が生まれたのですが,生後18ヶ月の時にテイーンエイジャーのベビーシッターに任せていたら,自宅のポールに落ちて溺死と言う悲劇に見舞われています。
ブルースは長身に,長い手足と言う体つきを買われて,映画に出るようになり、悪人やドラッグ中毒者,と言った役を手がけ、もろもろの西部劇の映画にも顔を出してます。
「当時のスターたちは,まさにビッガー ザン ライフのスターだった。ジョン ウエインは,常に不安な状況に身を置かないと上手くならないぞと僕を人の前でけなしたり,突き放したりしては,あとで可愛がってくれた。ベテイ デイビスは週末になると自宅を開放して出演者はもちろん,クルー全員を招いて,盛大な食事や娯楽の出し物まで提供してくれて,まさに女王の存在だった。みんな普通の人間には無い巨大なスター性をもっていて,近づき難いオーラを放っていたね」
とブルースは懐かしんでいましたが,実は彼は大変なおしゃべりで一旦話し始めると止まらなくなり,インタヴユーでも延々と,50年前の事でも名前も場所もはっきりと覚えていて,それは楽しそうで内容も最高に面白のです。
先日はニユーヨークのパーテイーに顔を出し,ここでレオナルド デイカプリオにばったり合って,実はレオはすぐにどこかに行かなければならないのに,大先輩のブルースの長い会話をずーっと1時間近く聞いていました。レオのマナーはさすがに良かったとは言え、こう言うスーパースターを捕まえて独り占めにしてしまうブルースの無頼漢風行動はやはり怖いものなしの生まれと育ちから来たのでしょうか。
「ブラック サンデイー」(77)や「カミング ホーム」(78)ではパワフルな演技力を見せ,ハリウッドの演技派として評価されるように。特に不誠実な妻のジェーン フォンダの夫にして、ベトナム帰還兵の後遺症に悩む役を演じた「カミング。。」ではアカデミー賞助演賞の候補になってます。
「ザット チャンピオンシップ シーゾン」(82)ではロバート ミッチャムらのベテランと共演,次の選挙で再選を狙う市長の役を熱演。その後は,スタジオを手こずらせたりして、あまりぱっとせず,映画の脇役,テレビのゲスト役などを手がけていただけに,「ネブラスカ」への執着が理解出来ます。
今だに雨が降っても,風が吹いてもランニングは欠かさないヒョロヒョロの体に、ほわほわの白髪の永遠のランナーですから,どこかに老長距離ランナーの風化され,枯れた雰囲気があって,それが又不思議なエレガンスを漂わせています。
もっと詳しくブルースの事をキネマ旬報1月上旬号(12月20日発売)に書きました。ご覧頂けたら嬉しいです。
2013年11月「ネブラスカ」 |
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