EILEEN ATKINS

June 22, 2023

EILEEN ATKINS

英国の最上級女優、アイリーン　アトキンスは私の大好きな女優の一人。気位が高く、毅然として、貴婦人然としたたたずまいがトレードマークでしょう。

最近亡くなったグレンダ　ジャクソン GLENDA JACKSON　にも共通した高慢にして、傲慢な印象がありますが、後に政治家になり、そして女優にカムバックしたジャクソン（１９３６−２０２３）よりもずっと整った顔立ちの美しい女性です。

１９３４年６月１５日、英国のクラプトン CLAPTON にある救世軍の病院で母親が４６歳の時に生まれました。父親はガスメーター記録係、母親はバーの女給という貧しい下流階級の家で育ち、近所のジプシーからダンスを教えられて舞台女優を志したものの、上の兄姉たちは既に未成年ながら職についていて、子供たちにはすぐにお金になる職業を望んでいた親は反対しましたが既に頑固で自分の思う通りの道を歩むと主張するアイリーンには勝てなかったそう。

そうです、少女の時から、あの反抗的で、頑固で、自我の強いキャラクターがしっかりと根づいていて、それが華奢な体と彫りの深い顔立ちと合わさって、強弱を無言で表現できる完璧な女優になる要素になったに違いありません。

１６歳で演技学校に入り、ここで根強いコックニー訛りを徹底的に矯正、何度も何度も微かに残る訛りを指摘されたそうで、英国の俳優はまず、お国訛りを捨て、基本的な英語の発音から、役によって、古典英語、舞台英語、リバプールからスコットランドにアイルランド、ウエールズ、などの訛りを身につけるそう。アクセントに敏感な英国人はロンドンの周囲１０マイルぐらいの地区の微妙な違いが分かるそうです。

１９５３年　１９歳の時に　新人のコーチのアルバイトをしながら校費を払って名門ギルドホール GUILDHALL を卒業、１９５７年にはロイヤル　シェイクスピア　カンパニー ROYAL SHAKESPEAR の舞台に出るようになります。

舞台ではオリヴィエ賞を３回も受賞、「クランフォード（０７）CRANFORD では英国アカデミー賞とエミー賞を受賞、

２００１年には英国女王からデイムの勲章を拝受、２０１０年にはオックスフォード大から文学の博士号を受けるなど、極貧にして無教養な家庭に育ち、大学などに行けなかったアイリーンの努力と誇りが目に見えるようです。

脚本家としても活躍して、人気テレビシリーズ「アップステアーズ・ダウンステアーズ」UPSTAIRS DOWNSTAIRS （７１−７５）、「ミセス　ダロウェイ」MRS. DALLOWAY（９７）などのストーリーを執筆し、最近はコロナで家にこもっている時間を利用して８７歳にして、自伝、「ウイル　シー　ドウ？」WILL SHE DO ? を書き上げました。いつか必ず読んでみたい本です。

人気テレビシリーズ「ドック　マーテイン」DOC MARTIN （０４−２２）では主人公の伯母様にして、科学捜査官のルス　エリンガム RUTH ELLINGHAM を演じていましたし、「ザ　スケープゴート」THE SCAPEGOAT （１２）では、おはこの貴族夫人の役。

同世代の名女優達、全員がデイムの称号を持っているため「テイー　ウイズ　デイムス」TEA WITH DAMES というドキュメンタリー番組では、仲良しのジュデイー　デンチ JUDI DENCH　（１９３４年生まれ）、マギー　スミス MAGGIE SMITH 　（１９３４年生まれ）、ジョーン　プローライト JOAN PLOWRIGHT (１９２９年生まれ、９３歳）と嬉しそうに出演しています。

「クランフォード」（０７）の時にロンドンでインタヴューしたのですが、自分のことなど話すのは無意味とばかりに余り乗り気ではありませんでした。それも又、ノーナンセンスな彼女らしいと感心したのです。

１９５７年から６６年まで、俳優のジュリアン　グローバー JULIAN GLOVER と結婚、そして離婚、１９７８年からビル　シェパード BILL SHEPHARD と再婚、２０１６年にビルと死別。子供は居ないようですが、寂しさなど微塵も見せず、毅然としてプロフェッショナルに徹底している姿が又、素晴らしいではありませんか。