SYLVESTER   STALLONE


雷が鳴り,稲妻が走るローマの午後に今年の7月に66歳になったシルベスター スタローンに会いました。そのちょっと前に轟音と共にすぐ近くに雷が落ちたのですが,ミスターマッチョマンに,怖かったですねー,と同意を求めると、
「いやあー,ホテルのフロントの近くにいた僕は,コンシェルジェの腕の中に飛び込んでしまったよ。ワハハハ!」
とふざけてから、
「僕には怖いものはまず無いね。もう全て経験して,どうやって対処して良いか分かるから。小さい時は成績表を見るのが怖かった。悪いと母にこっぴどく叱られるから」
と可愛い事を言うのでした。

今回の会見は「ブレット ツー ザ ヘッド」(12)と言うウオルター ヒル監督の映画のPRで,スタローンは珍しく東洋人と組んで無意味なアクシヨンを繰り広げます。

顔の表面が月か火星の様にぼこぼこで,クローズアップのシーンはやけに暗いのが,何ともですが,目の前の彼はまあまあ何とか一瞥に堪えられるお顔で,整形をしすぎて,めちゃくちゃになったマスクはマイケル ジャクソンとかミッキー ロークと同様、とても凝視は出来ません。こちらの顔まで
溶けてきそうで,と書くと非情に聞こえるでしょうが,私めは彼の才能をこの上ないものだと昔から感心しています。

「ロッキー」(76)はあのテーマ曲と相まって士気を鼓舞してくれる力作ですし,ほとんどの映画をひとりで脚本,監督,主演してきたのも彼が自分自身を良く把握して,しっかり売れる作品に仕上げてきた腕は天才的です。そして自分を単細胞のキン肉マンにカリカチュアして,庶民の同感を得る
あたりの巧みな設定,当人は脳細胞が常に激しく作動しているとびきり頭の良いスターなのです。

今回も窮屈そうなスーツを着て,よく回らない太い首を直立し,あの妙に響く声でこんな事を白状してました。
「今まで映画に出る度に,今度こそ最後の映画だと決意を固めて出てきた。だから死に物狂いでアクシヨンをし,全く出し惜しみをしないから,体中の骨が折れる程の怪我をしてきた。今回も同様で筋肉は裂け,骨と言う骨が音を立てて砕けそうだった。しかしスタントマンを使う事が出来ない。別に自我とか,優越感ではなく,自分の役を自分で全うしてこそ
やったと言う満足が得られるから。」

今まで何十回と会ってきましたが,サービス精神に溢れ,気配りがきく完璧なエンターテイナーです。
2012 [ BULETT  TO  THE  HEAD ]
撮影に入ると毎日 チキンと野菜と言う同じメニューを数ヶ月食べ続けて体型を保ち,コンデショニングを計ると昔、言ってましたが,今もそうなのですって。

「ドルフ ラングレン(スウェーデンの美男肉体俳優)とか今回の「エキスペンダブルス2」(12)ではジャン クロード ヴァンダムと言ったプリテイー ガイを悪役に配置するときれいな顔で悪さをするものだから,余り可愛くない
僕への同情票が集まるのさ。それもストーリーメイキングのテクニックのひとつ」
と自己軽視の軽いコメントをよく言うのも,スマートなスタローンならでは。

そのロボットのような自己鍛錬の厳しさひとつをとっても
CGIに頼り切っている若手俳優達とは全く違う根性の人なのです。昔気質の職人のような生き方にイェールを送りくなりますよね!


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